
世界農業遺産「琵琶湖システム」Instagramアカウントにて開催されているおうちグルメキャンペーン!
※詳しくは世界農業遺産「琵琶湖システム」Instagramアカウントをご覧ください。
第4回の食材では、滋賀県オリジナル品種の近江米「きらみずき」が登場しました!
オーガニック栽培をはじめ、環境にやさしい栽培方法に限定して栽培されている「きらみずき」は、大粒でしっかりとした食感、すっきりとしたみずみずしい甘さが強みで、噛むほどに甘さが広がります。
当選された方のアレンジレシピがInstagramに投稿されていくので、ぜひチェックして調理してみてください!
そして!
きらみずきの魅力をより多くの人に知っていただくために、「環境こだわり農産物」としてきらみずきの栽培に取り組む株式会社田楽の佐々木健二さんに取材させていただきました!
佐々木さんが挑戦し続ける安心安全な食を守るための工夫をぜひご覧ください。

滋賀県オリジナル品種「みずかがみ」の販売開始からおよそ10年。
2023年秋から販売が始まった「きらみずき」は、滋賀県農業技術振興センターが13年をかけて育成した近江米で、大粒で食べごたえがあり、すっきりとしたみずみずしい甘さが特徴。
噛むほどに甘味が広がると評判だ。
滋賀県竜王町にある株式会社田楽では「きらみずき」の栽培に力を入れている。
広大な田んぼを舞台に、自然と向き合いながら“琵琶湖を守る米づくり”を実践している会社だ。
今回は同社に勤務する佐々木健二さんに、きらみずきの一年と、環境こだわり農業に挑む思いをうかがった。
甲賀市にあるお寺の次男として生まれ、仏具や歴史的な建造美に触れて育った。
幼少期の兄はお寺を継ぐ気がなさそうで、漠然と自分が継ぐことになるのではと考えていた。
小学5年生から卓球を始め、中学進学後も卓球漬けの毎日を過ごしていた。
高校でも卓球を続けたが、体調を壊し引退する。
生活の一部になっていた卓球ができない日々に、今まで自分を作り上げてきた環境を否定したくなるような、やり場のない思いが募った。
高校卒業後は、幼い頃から興味を惹かれていた造形美の世界に憧れを持ち、インテリアデザイナーを目指して専門学校に進学した。
2年生から家具デザインコースを履修する専門学校だったが、進級するタイミングで家具デザインコースが廃止されることになり、デザイナーの道が閉ざされた。
アルバイト先のゴルフ場に席を置き、自分を見つめ直す時間を過ごした。
転機となったのは新型コロナウイルスの流行だった。
見ることすらできない小さなウイルスによって、安心で安全な生活という「常識」や「あたりまえ」が壊れていく様を目の当たりにし、衣食住を守る仕事に就きたいと考えた。
特に安全な食を作る農業の道を志望した。
株式会社田楽との出会いは、農業に興味を持つ人と農家をつなぐ求人サイトだった。
面接を担当してくれた社長の柔軟な人柄に惹かれて就農を決意する。
同社は東京ドーム23個分に相当する、110ヘクタールの広大な農地で、水稲・大豆・小麦などを栽培している。
水稲はきらみずきだけでなく、みずかがみやコシヒカリなど10種類以上を取り扱う。
お米の品種によって作業時期がずれることから、収穫などの繁忙期が同一時期にならないように工夫している。

佐々木さんは、小学校でアサガオを育てて以来、土や植物に触れた経験はなかった。
入社後、農業に関して右も左もわからない状態だったが、日本農業技術検定試験の学習を通じて基礎知識を習得していった。
机上で得た農業を、土に触れて実践する。
各作業が作物にとってどういう意味を持つのかを理解した上で行うことで、作業の一つひとつに目的と手応えがあった。
日々の微細な作物の成長への気づきが、自身の成長を感じさせた。
「水は最終的に琵琶湖に還っていきます。琵琶湖への配慮をしないといけない。

竜王町は琵琶湖から10㎞以上離れているが、ポンプによる送水施設が整備されており、琵琶湖の水が農業用水として利用されている。
琵琶湖から田畑へ、そしてまた琵琶湖へと循環している。
滋賀県では、平成13年から、従来の慣行農業と比較して、化学合成農薬と化学肥料を通常の5割以下に減らすとともに、濁水の流出防止など、琵琶湖にやさしい技術で生産された農産物を、「環境こだわり農産物」として認証する取り組みが続けられている。
きらみずきの栽培は、オーガニック栽培か、環境こだわり農産物の栽培基準より、さらに化学合成農薬や化学肥料を削減することが求められる。
株式会社田楽では、一部の品種をのぞいて、環境こだわり農業での栽培を行っているが、慣行農業と環境こだわり農業では、一反あたりの収量に違いがある。
きらみずきを初めて栽培した令和5年度の一反あたりの収量は360㎏だった。
一方で、従来の慣行農法で栽培した水稲は一反あたり520㎏の収量があった。
前年の結果を踏まえ、令和6年度は有機質肥料の量や施肥のタイミングを調整し、一反あたりの収量は400㎏まで増えたが、それでもまだ慣行農法との収量の差が大きい。

収量だけでなく、栽培にかかる手間にも違いがある。
慣行農業では田植え時に、いわゆる「一発肥料」を施肥すれば済むが、株式会社田楽での栽培では、有機質肥料を使用する際は複数回に分けて施肥をしているので、特に夏場の施肥作業は暑さで肉体的な負担が大きい。
有機質肥料の種類によっては微生物による分解を経て効果が出るまでに約1週間かかり、その間の天候変動で効果のタイミングにずれが生じがちだ。
近年は猛暑により分解が早まったり、秋まで効果が続かなかったりと、扱いが非常に難しい。
「環境にやさしい栽培で、きらみずきの収量を増やしたい。」
2021年4月に株式会社田楽へ入社した佐々木さんにとって、2023年に販売が始まった「きらみずき」は同期のような存在。
収量を増やし、ブランドとして育てていくことで、自身の農業の歩みを重ねていきたいと意気込む。
きらみずき栽培を始めて3年目の今年、令和7年度の一反あたりの収量は430㎏と、着実に成果を上げている。
何を、どのように、どのタイミングで行うのが最適か——その年の気候によって、これまでの経験が通用しないこともある。
それでも、安心・安全な食を守り、より大きな実りを目指して、佐々木さんの挑戦は続く。

