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おとめに想い馳せ、一作一会の試行錯誤

世界農業遺産「琵琶湖システム」Instagramアカウントにて開催されているおうちグルメキャンペーン!
※詳しくは世界農業遺産「琵琶湖システム」Instagramアカウントをご覧ください。

第6回の食材では、「環境こだわりにんじん」として東近江市八日市地域で栽培されている「おとめにんじん」が登場しました!

「おとめにんじん」は環境こだわり農業で栽培されており、一般的なにんじんよりも甘みが強く、柔らかいのが特徴です!

当選された方のアレンジレシピがInstagramに投稿されていくので、ぜひチェックして調理してみてください!

そして!
おとめにんじんの魅力をより多くの人に知っていただくために、JAグリーン近江八日市人参生産部会の角久和さんに取材させていただきました。

良い栽培ができるよう常に試行錯誤し、「おとめにんじん」に思いを馳せる角さんの想いをぜひご覧ください。

普段は主役を引き立てる控えめな性格。それでも、橙色の輝きは誰よりも鮮やかだ。
肉じゃが、筑前煮、カレーライス、シチュー、そして八宝菜。和洋中あらゆる皿というステージで観客を魅了し続ける名脇役――ニンジン。

幼い頃は独特の風味が苦手だった人も、大人になるといつの間にかその甘味に惚れてしまう。そんな不思議な魅力を持つ存在だ。
ニンジンは江戸時代初期の書物にその名があることから、その頃に日本に伝わったとみられている。

スーパーで販売されているニンジンの多くは西洋系ニンジンと呼ばれる品種だが、最初期のセリ科のニンジンは東洋系ニンジンと呼ばれる、中国から伝わった細くて長く、紫や黄色の品種だった。

その後、江戸時代後半ないし明治時代初期に西欧諸国から伝わり、現在よく見るオレンジ色のニンジンが広まっていく。
東洋系ニンジンは西洋系に比べて栽培しにくかったことから、第二次世界大戦後は急速に西洋系ニンジンの栽培が主流となった。

東近江市出身の角さんは、代々続く農家の家系に生まれ育った。
幼少期からゴールデンウィークの田植えが恒例行事であり、父の代までは米を中心に、ニンジンや黒豆、菜花を育てる姿は日常の景色だった。

「特に両親から言われたわけではなかったんですが、将来は父と同じで、農業に重きを置く兼業農家になるものだと思っていました。
高校卒業後は電子機器の製造メーカーに就職しました。
同僚には兼業農家が多く、会社としても農繁期に理解があったので、仕事の傍らよく父を手伝っていました。」

転機が訪れたのは10年前。それまで角家の農業を担っていた父が大病を患い、角さんが一手に担うことになる。

「田植えの時期までは元気で、一緒に田植えをしたんですが、7月に病気がわかって父が入院しました。
父の代わりに、JAの担当者さんとやり取りしてると、『8月にはニンジンの種まきが始まりますけど、角さんもニンジンの栽培をされませんか』って勧められたんです。」

当時、まだ交代勤務の会社員で、朝・夕に時間が取れることから、父の後を継ぎニンジン栽培を始めた。米作りを手伝ってきたが、ニンジン栽培の経験はなかった。

「JAさんに丁寧に教えてもらってニンジンにチャレンジしました。
その当時、八日市人参生産部会の取り組みが始まっていたので、部会の研修会に参加し、おとめにんじん作りを始めました。」

おとめにんじんとは、平成22年に設立された八日市人参生産部会の部会員によって栽培されているニンジン。
栽培するにあたり、研修会が年間で複数回実施され、各農家間での品質が均一化されている。

おとめにんじんは一般のものより柔らかく、甘みが強い品種で作ったニンジンとして知られ、その栽培方法は、慣行農業(通常の栽培方法)で使用される化学合成農薬及び化学肥料と比べて使用量を5割以下に削減する環境こだわり農業に限定されている。

「ニンジン栽培を始めた時から環境こだわり農業が当たり前だったので、特に戸惑いはなかったです。
部会やJAさんから提供される栽培資料に従って育てています。」

栽培方法が厳格に定められているおとめにんじん。
環境こだわり農業が当たり前であると語る角さんだが、試行錯誤を続けている。

毎年同じ畑で同じ野菜を栽培すると、土壌の養分バランスが崩れたり、特定の害虫が増えたりと、作物の成育が悪くなる連作障害が起こることがある。
ニンジンも連作障害が起こるとされている。

「この場所でニンジン栽培を始めて今年で4年目です。
3年前に畑全体に牛ふん堆肥を肥料として入れたら良いニンジンができたんです。
今年も牛ふん堆肥を入れたので、太いニンジンができました。

来年はヘアリーベッチというマメ科の植物を植えてそのまま土にすき込んで肥料にしようと思っています。
年ごとに牛ふんと緑肥(ヘアリーベッチ)を交互にやっていく予定です。
特定の肥料に偏らないようにして、連作障害が出ないように工夫しています。」


牛ふん堆肥の効果があり、今年は良質のおとめにんじんが収穫できたが、収量は昨年よりも少なくなる見込みだという。

「昨年までは種まきの後の水やりを朝夕2回やっていたんですが、夕方の1回にする方法もあると聞いて、今年は試しに夕方だけにしてみたんです。
そうすると発芽率が悪く、例年ほど芽が出ませんでした。
過去に何を育てきた畑なのか、水はけ具合や日当たりなど、その畑に最適な方法を探す必要があります。」

肥料の種類、水やりの回数やタイミング、何をいつ、どれほどの量を…日々ニンジンに思いを馳せる。
考えた栽培方法を試せるのは年1回だけ。その結果は収穫の瞬間までわからない。毎年、一期一会の出会いがある。

「来年はこうしよう、ああしようと今から考えています。」

大切に育てられたおとめにんじんのおすすめの食べ方を伺った。

「個人的な感想なんですが、環境こだわり農業で栽培した『おとめにんじん』は同じ品種の慣行農法で栽培されたニンジンと比べて、香りがふわっとしている気がします。
なので茹でてマヨネーズで食べても美味しいです。
一番のおすすめは5㎜ぐらいの厚みに切ってフライにして食べる食べ方です。」

普段は主役を引き立てる名脇役だが、時には主役も張れる実力派。角さんの思いが詰まったおとめにんじんを召し上がれ。

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